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だめよぉ義太夫だけじゃ

 私は声質がやや上っ調子で、高い声は出やすいが低い声が出にくい。若い頃は、高座で声が上滑りすることもあった。「それなら義太夫をやってみたら」と勧めてくださる先輩がいて、大塚のお師匠さんのところへ通うようになった。真打ちになる前、二十歳そこそこだったろうか。

 落語にも「寝床」「軒づけ」「胴乱の幸助」「豊竹屋」など義太夫が出てくる噺(はなし)がある。たいていは大げさに語って笑いをとる趣向だが、本来義太夫には、ドラマチックな人間模様を描く悲しい物語が多い。「義経千本桜」「曽根崎心中」「冥途の飛脚」……。語るときに縁起をかついで塩をまいたりする。粋な新内や小唄がロックンロールなら、義太夫は渋いブルースといったところか。

(2008年5月8日付朝日新聞東京本社夕刊から)


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林家 正蔵(はやしや・しょうぞう)

 落語家。1962年12月1日、東京・根岸生まれ。3代林家三平の長男。78年、高校入学と同時に林家こぶ平として落語協会に所属。88年、真打に昇進。2005年、9代林家正蔵を襲名。母海老名香葉子さんはエッセイスト。弟の林家いっ平も落語家、姉美どりは俳優の峰竜太夫人などという芸能一家。







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